音大受験の準備はいつから?ソルフェージュは「最低3年」——パリ音楽院で学んだ僕が考える、受験準備の本当の話
- Musashi Ishikawa
- 8月4日
- 読了時間: 4分
こんにちは、ピアニスト/ストライプミュージックスクール代表の石川武蔵です。
「音大受験って、いつから準備すればいいんですか?」
これは、音楽の道を考え始めたご本人からも、親御さんからも、必ず出てくる質問だと思います。結論から言うと、ピアノ専攻なら楽器の訓練は小学校低学年までに始まっているのが現実的なライン、ソルフェージュは未経験なら受験まで最低3年は見ておきたい——というのが僕の考えです。
ただ、この「3年」という数字には条件があります。今日はパリ国立高等音楽院で学んだ経験も踏まえて、この話を少し丁寧に書いてみます。
ピアノの訓練は「小学校低学年」がリミット
ピアノ専攻で音大を目指す場合、楽器そのものの訓練は小学校低学年までに始まっていることが、現実的な前提になります。これは才能の話ではなく、受験で要求される演奏水準に到達するまでの、物理的な訓練量の問題です。これはヴァイオリンをはじめとする弦楽器も同じです。
一方で、管楽器や声楽は事情が違います。始めた時期が遅くても専攻として成立するため、ソルフェージュ未経験のまま受験を意識し始めるケースが少なくありません。この場合の答えはシンプルで、受験を考え始めたその時が、ソルフェージュの始め時です。
ソルフェージュ「最低3年」の根拠と、例外
まったくの未経験からソルフェージュを始める場合、受験水準に到達するまで最低3年は見ておきたい、というのが僕の考えです。聴音や視唱は、知識として理解すれば済むものではなく、耳と身体に馴染ませていく時間がどうしても必要だからです。
ただし、この「3年」は一律ではありません。幼少期にリトミックや音楽教室などで耳を育てる環境があった場合は、もっと短い期間で受験水準に届くこともあります。すでに耳が育っていれば、あとは記譜や課題の形式に慣れるだけ、というケースもあるからです。
つまり「いつから始めるべきか」の答えは、それまでにどんな音楽経験を積んできたかで大きく変わります。だからこそ、開始時期を悩む前に、まず現在地を正しく診断することが大切だと考えています。
そもそもソルフェージュとは何か
受験の文脈でソルフェージュというと、聴音(流れた音を楽譜に書き取る)や視唱(初見の楽譜を歌う)といった試験科目そのものを思い浮かべる方が多いと思います。
でも、それらは訓練と測定の手段であって、目的ではありません。ソルフェージュとは本来、音楽と楽譜を正しくとらえる力を養うことです。楽譜に書かれた情報を音として正確に想像できる。聴いた音楽を構造として理解できる。演奏という行為の土台にある、いわば音楽の読み書きの能力そのものです。
聴音の点数を上げるためのパターン訓練と、音楽をとらえる力を育てることは、重なりはしますが同じではありません。受験を超えて音楽を続けていくなら、後者を育てる勉強の仕方をしてほしい——これは僕がいつも思っていることです。
パリから見た、日本の受験ソルフェージュ
僕はパリ国立高等音楽院(CNSMDP)の修士課程を修了しましたが、日仏両方の音楽教育を内側から見て、はっきり感じたことがあります。
日本の受験ソルフェージュの水準は、世界的に見て圧倒的に高い。
桐朋学園や東京藝術大学の入試で要求されるレベルは、パリの入学時の要求と比べても明らかに高度です。日本の受験生が積み上げる訓練量は、世界基準で見ても突出しています。
ただし、入学後は逆転します。パリでは必修科目を修了するために求められる水準が高く、学びの総量では日本を上回ります。教育の中身にも違いがあって、たとえばパリの視唱の授業では実際の歌曲を教材として使います。抽象的な課題をこなすのではなく、現実の音楽をとらえる訓練として設計されている。ソルフェージュの本来の意味に忠実なのは、むしろパリの方式だと感じました。
日本の受験生に伝えたいのは、あなたが積んでいる訓練は世界に誇れるものだ、ということ。同時に、それを試験のための技術で終わらせず、音楽をとらえる力として育てていけば、留学や国際的な活動でも強力な土台になるということです。
未経験からの受験、間に合う?
「ソルフェージュを習ったことがないまま中学生になってしまった。音大受験は間に合いますか?」——この不安を持つ方は多いと思います。
専攻によりますが、ソルフェージュ自体は未経験から3年あれば受験水準に到達できます。中学からの開始でも、高卒時の受験には計算上間に合います。ただし耳の育ち方には個人差が大きいので、独学で進める前に、一度診断を受けて自分の現在地を知ることをおすすめします。
当教室(本八幡駅徒歩1分)でも、音高・音大受験に対応したソルフェージュ指導を行っています。試験対策に留まらず、「音楽をとらえる力」そのものを育てることを方針としています。受験を考え始めた方は、体験レッスンでまず現在地の診断からどうぞ。




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