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まだ鳴っていない音を聴く——ピアノを弾く前にしていること

執筆者の写真: Musashi Ishikawa
Musashi Ishikawa
5 日前
読了時間: 5分

ピアノを弾くとき、自分が出した音だけを聴いていませんか?


弾く前には、どんな音を出したいのかを、自分の中で聴いておく必要があります。その音を目指して弾き、実際の響きを確かめる。思うような音が出なければ、どう弾けばよいかを考え、もう一度試してみます。


前回は、音を響かせるための身体の使い方について書きました。今回は「聴くこと」について。弾く前に頭の中で聴いている音と、弾いたあとに部屋に広がる響き。その両方について書いてみます。


弾く前に、鳴らしたい音を聴く


よく知っている歌を、声に出さずに歌ってみてください。実際には音が鳴っていなくても、頭の中では旋律が続いていくと思います。このように、自分の中で鳴っている音を聴くことを「内的聴覚」といいます。


ピアノを弾くときには、音の高さやリズムだけでなく、どんな響きで、どんな強弱をつけ、どうフレーズを歌いたいかまで思い描きます。そして、その音を出すために身体を動かします。


音楽心理学者のピーター・ケラーは、演奏中の音や動作のイメージについてまとめた論文で、これから鳴る音や行う動作をあらかじめ思い描くことが、動作の準備や、無駄の少ない正確な演奏を支えると論じています。(Keller, 2012)


どんな音を出したいかによって、身体の使い方も変わります。だからこそ、まず鳴らしたい音が自分の中にあることが大切なのです。


まず、声で歌ってみる


そのために、まず取り組んでほしいのが、楽曲を声で歌うことです。


歌手のように歌う必要はありません。音程も正しく取れるに越したことはありませんが、うまく取れないからといって、歌う意味がないわけではありません。大切なのは、どう表現したいかが自分の中にあることです。


もちろん、そのもとになるのは楽譜です。音の高さだけでなく、ディナーミク、つまり強弱の指示も読む。曲の様式やスタイルを踏まえて、アゴーギク、テンポの微妙な揺れをどう扱うかも考える。そうして楽曲を捉えることで、どう歌うかが見えてきます。


これは、ソルフェージュの力に関わる話でもあります。音符を正しく読むだけでなく、そこに書かれた音楽を理解する。そして、自分がどう捉えているかを、声に出して確かめてみます。


打鍵したあとの響きまで聴く


レッスンでは、打鍵の瞬間に意識が集中していて、そのあとに続く響きにまで耳が向いていないと感じることがあります。音を出すことに一生懸命で、出した音がどう響いているかまでは聴けていないのです。


そんなときは、「空間の中で鳴っている音に意識を向けて」と伝えています。頭の上に広がっている響きを聴くような感覚です。


鍵盤に触れたあとも、音は響いています。打鍵したところで終わりにせず、その響きまで聴いてほしいと思っています。


ただ、一度伝えたからといって、すぐに変わることはありません。何度もレッスンで取り組むうちに、少しずつ空間の響きを意識できるようになります。それにつれて、音もだんだん伸びやかになっていきます。


音の前後にある静けさまで聴く


ジャン・ファシナの『Lettre à un jeune pianiste』(若いピアニストへの手紙)の序文で、留学時代の師ジャック・ルヴィエは、ファシナがいかに徹底して音を聴くことを求めていたかを述べています。その中に、次の言葉があります。

「音に先立つ静寂から、音のあとの静寂まで」

音が出る瞬間だけでなく、その前後まで耳を澄ます。短い言葉ですが、どこまで注意深く聴くのかが伝わってきます。


普段レッスンで伝えている「部屋で鳴っている音を聴く」ということにも、通じるものを感じます。


思い描いた音が出るまで、弾き方を見直す


鳴らしたい音が自分の中にあっても、そのとおりに弾けるとは限りません。


自分の場合、思うような音が出ないときは、身体を自由に動かせていないことが多いと感じています。そんなときには、イメージした音が出るまで弾き方を見直します。


前回書いた、体幹や手の支え、腕の使い方、打鍵した瞬間に緩めることも、ここにつながります。身体の使い方を変えて、もう一度弾いてみる。そして、音がどう変わったかを聴きます。


そのとき、目安になるのが、最初に思い描いた音です。実際の響きと聴き比べながら、どうすればその音を出せるかを探っていきます。


二つの「聴くこと」を大切にする


楽譜を読み、声に出して歌い、鳴らしたい音を自分の中で聴く。そして弾いたら、部屋に広がる響きを聴く。


この二つを、日々の練習で繰り返していきます。すぐに思うような音が出なくても、聴きながら試すことを重ねるうちに、少しずつ変わっていきます。


「よく聴いて弾く」ときには、出した音とともに、これから出したい音にも意識を向けてみてください。弾く前に何を聴いているかは、実際にどんな音を出すかにも関わっています。


本八幡でピアノレッスンをお探しの方へ


「自分の音をよく聴いてと言われても、何を聴けばよいか分からない」「弾きたいイメージはあるのに、思うような音が出ない」。そんな悩みがあれば、レッスンでご相談ください。


ストライプミュージックスクールでは、実際の演奏を聴きながら、楽譜の読み方や音の聴き方、身体の使い方を一緒に考えていきます。声で歌ったり、実演で音の違いを確かめたりしながら、弾きたい音楽を形にしていきましょう。


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